「しかし、それは先ほど田乃郷さんが言っておられたAI技術を利用して高齢者を仕事に復帰させるということと矛盾しないですか?」

多比余が突っ込んだ質問をした。

しかし田乃郷は怒り出さなかった。

「よく指摘されますが、要するにテクノロジーをどのように利用するかということです。

人は常にテクノロジーを便利に利用する側でなければならず、決して隷属することがあってはならないのです。

新しいテクノロジーが開発されると無条件に受け入れて強引に国民に押し付ける国があったとしても、日本はそうなって欲しくないんです。

テクノロジーが、人間にとって本当に心地よいものかどうかをよく吟味して選択的に取り入れていくべきだと私は考えます。

例えばここに来る時久しぶりに電車を利用したんですが、券売機が使いにくくなっていることに驚きました。

ほんの数駅乗るだけなのに、『買いたいのは定期券か鉄道カードか乗車券か、現金で買うのかそれともカードなのか、特急券は必要か』など、昔はみどりの窓口で行われていたものが廃止され、券売機に集約しているんです。

結局切符1枚購入するのに数分かかり、やっと出てきた切符は新幹線の切符のように定期券サイズの大きなものでした。実に使いにくく無駄な話だと思います。

また紙の切符を完全になくしQRコードのみにするという話もありますが、これは高齢者を切り捨てると同時に国民全員にスマホの所持を義務付けるという、どこかの乱暴な独裁国家のような行為だと私は思いますけどね」