しかし、演奏される曲は誰もが聞いたことがない、どんなジャンルにも当てはまらないコンピュータとシンセサイザーによる音楽である。

集まった客のほとんどは細野晴臣のトロピカル三部作の延長線であることを期待していたかと思うが、その期待は見事に裏切られた。吉村は以下のように述べる。

 

「細野晴臣は(中略)『どよーんとした反応が返ってきて驚いた』と言う当時の心境を語っている2

 

同じライブにクレジットされていたニール・ラーセンはアメリカの人気キーボーディストで、そのプロデューサーがトミー・リピューマである。

このイベントにも当然来日していたが、ここで川添象郎が暗躍する。

 

「僕は……トミー・リピューマの滞在するホテルオークラへ、上等なシャンパンを幾本か持っていき、しこたま飲ませた。(中略)YMOの演奏が始まると、ノリノリだ。

『これはユニークで面白い! アメリカでリリースしよう!』なんて口走っている(中略)

すぐにA&Mの会長であるジェリー・モスに電話して、『日本でトミーがこう言ってるから、アメリカでのリリース、よろしく頼むよ!』と勢いよく伝え、ジェリー・モスはなんだかよく分からないうちに『OK』と答えたらしい3

 

川添が強引な行動をとったように感じるが、川添の人格あっての信頼関係がA&Mとの間にあったことを証明するエピソードである。

本当は、川添は長い下積みから培ってきた人脈で、このような結果を出しているのである。