第2章 リスクテイキング行動(不安全行動)
2、不正のトライアングル
どのような理由で、人はリスクテイキング行動を取ってしまうのでしょうか。それを理解するためのモデルがあります。
図1は米国の犯罪学者であるD.R.クレイシーが実際の犯罪者を調査して導き出した“不正のトライアングル”のモデルです。この“不正のトライアングル理論”では、不正行為は、①動機、②機会、③正当化という“不正リスクの3要素”が、全てそろった時に発生すると考えられています。これら3つの要素の1つでもなくすことができれば、リスクテイキングは起こらないという理論です。
それでは、トライアングルを構成する3つの要素がどのようなものなのか、順番に見ていきましょう。
1)動機
“動機”とは、不正行為の実行を欲する状況・事情つまり理由のことです。企業でよく発生する不正行為では、“締め切りの期限が迫っており、期限に合わせるために不正を行った”、“要求された予算内で仕事を終えるために、規格で定められた品質の部品を、コストの安い部品で代用した”などの例があります。
このように企業からかけられたプレッシャーに耐えられなくなった例はよく聞く話です。