沙優は俺に詰め寄り俺の胸に顔を埋めた。

愛している沙優を抱きしめたかった。でも、瑠美との一夜が脳裏を掠める。覚えていないが、一晩中瑠美と一緒だったことは言い訳が出来ない。男と女が一晩中一緒にいて何もなかったなんて誰が信じるだろうか。

しかも、俺は記憶になくても、瑠美は俺に抱かれたと言っている。他に証言する者もいなくて、俺が否定すれば、それは都合のいい逃げにしか聞こえない。

「香水の女性は誰ですか」

まっすぐに沙優は俺を見た。俺は戸惑いを隠せなかった。沙優は俺の態度で答えを見いだしたかのように俯いた。そして何も言わずにマンションへ入って行った。俺はどうしたらいいか途方に暮れた。

しばらく私と貢さんはこの時のことには触れずに時間だけが流れた。私は愛されていないことへの不安に押し潰されそうな毎日を過ごしていた。

住職から言われたことがやっと理解出来た。いつまでも圭人を忘れないことが貢さんにとって気分がいいわけがない。「その子は圭人の子供なのか」と、そんな言葉を言わせたのは私の配慮が足りなかったからだ。

私に対してヤキモチ妬いたってことなの。でも貢さんは心の底で愛している女性がいる。香水の女性。華菜さんなら知っているかも。私は華菜さんに連絡を取った。

「あら、久しぶりね、どうかしたの」

「会って話したいことがあって……」

私は華菜さんと待ち合わせをした。

「随分とお腹目立ってきたわね」

「八ヶ月目に入りました」

「幸せいっぱいってことね」

私はそうならいいけどと思いながら俯いた。そんな表情の変化に華菜さんはすぐに気づいてくれた。