【前回の記事を読む】妊娠8ヵ月の妻がいるのに…元カノの相談にのるためホテルで飲むと、彼女は俺に抱きついてきて…
第八章 忍び寄る罠
ぽつんと残された私はこの気持ちを処理しきれずにいた。あの香水の香りは誰といたんだろう。朝帰りってことは一晩中その女性と一緒だったってことだよね。今、キスしようとしたけど、貢さんは「沙優、ごめん」って言った。私はやっぱり愛されてはいないってことだろうか。
その日私は圭人のもとへ向かっていた。
「おや、お墓参りですかな」
私に声をかけてきたのはこのお寺の住職だった。
「あ、はい、その節はお世話になりました」
「いえいえ、そのお腹、母親になるのですね」
「はい、八ヶ月目になります」
「そのご報告ですか」
「あ、いえ、あのう……」
「あまり、こちらにはこられない方がよろしいかと」
「えっ」
住職の言っていることがこの時は理解出来なかった。私はマンションに戻るしか出来なかった。マンションに戻った時は、夜になっていた。
マンションの前で貢さんが、キョロキョロと辺りを見回していた。
第九章 愛されていない私
私の姿を見つけると、私の方へ駆け寄ってきた。
「沙優、こんな時間までどこに行っていたんだ」
「遅くなってすみません、圭人のお墓に行っていたんです。順調だと報告に」
私の言葉に貢さんは表情を変えた。
「その子は圭人の子供なのか」
「そんなわけないじゃないですか」
貢さんの言葉に驚きすぎて言葉が続かなかった。
「それならわざわざ報告する必要はないだろ」
「不安になったんです、私。このまま貢さんに付いて行っていいのか」
私は溢れる涙を抑えることは出来なかった。
「沙優、俺を信じてくれ」
「何をどう信じろって言うんですか」