1 落ちこぼれ全開―不遇の学生時代―

昭和のおもちゃ箱

「また学校に行くんかねー」

母の大きな声に足止めされることなく、玄関の扉を開けるなり、背中の重りとなっていた黒い物体は気持ち良く放り投げられ、キラキラ輝く放課後がスタートした。

自宅の裏手に、ひときわ目を引く藍色の鉄の扉があった。藍は古くから「守りの色」と呼ばれる。そのせいか無骨でありながら、どこか愛嬌のあるその扉は、二つの世界をつなぐ境界線のような存在だった。

扉の向こうには小学校の校庭が広がっており、開け放てば、家と学校の世界を自由に行き来できる――その不思議な感覚がたまらなく好きだった。

扉を抜ければ、そこにはいつも仲間たちがいた。野球、サッカー、ダンス、鬼ごっこ、時には秘密基地を築く。放課後のグラウンドは、想像力がすべてを支配する、子どもたちだけの自由な王国だった。

遊び場はグラウンドにとどまらない。ギア付きの流行りの自転車にまたがり、駄菓子屋を巡り、魚を釣り、線路の上を歩き、用水路でザリガニを追いかける。

町中が僕らのフィールドだった。陽気な大人たちが「元気があっていいね」と笑いながら声をかけてくれる。

大人も子どもも同じ景色を見て笑い合える、そんな優しさがあった。放課後のスケジュール帳は、いつも“旬の遊び”でびっしりと埋め尽くされていた。

今日という1日を、まるで大切な贈り物のように、分厚く、目一杯生きていた。

「おーい、晩ごはんになるから、そろそろ帰っておいでー!」

夕焼け空に響く母の呼び声が1日の終わりを知らせてくれるその瞬間まで、僕たちは夢中で遊びに没頭していた。

宿題は、布団に入る前のほんのわずかな時間で片づける。それが、あの頃の“日常”だった。