第一章 国家的プロジェクト
一 裏利権
令和五年夏、東海県南部海岸線では、大型重機による掘削、一〇トンダンプによる土砂排出で交通渋滞が発生、さらに日本全国から集結した右翼団体の街宣車で日頃のどかな漁村地区は喧騒を極めていた。
海岸線には、収容人員五万人の屋内スタジアムが着工され、完成の暁には日本武道館を大幅に超える規模の格闘技イベントが開催できる超大型国家プロジェクトが進行中であった。
事前に危惧された地震、津波対策も地上三〇メートルのアリーナ部分の底上げと周辺堤防のかさ上げにより事前審査をクリアーし土台着工に着手したばかりであった。
しかし、本工事を取り巻く環境は最悪であった。
そもそも着工予定のスタジアムは、格闘技専門で、ボクシングの世界戦、柔道の世界選手権などの世界規模の大会と併せ、国内の各種格闘技団体でも日常的に大会が開催することができ、球技など他の競技とのバッティングの心配がないことで格闘技団体にとっては待ちに待った施設であった。
建設予定費用もそこそこに抑えられ、立地的にも新幹線駅から程近く着工自体には問題はなかった。
ただし、左派系団体は、「東京オリンピックの二の舞は御免だ」のスローガンで街頭での建設反対運動や街頭演説を繰り広げ、署名活動を展開していた。
スタジアム自体は、もともと国有地で地権者問題はないにしても、スタジアムに通ずる道路だけが地権者の同意を得て土地収用しなければならない作業が残されていた。
反対左派系団体は、地権者に働きかけて土地の保全の仮処分を裁判所に申請するなど法的手段に訴え、訴状提出時には弁護士を先頭に隊列を組みマスコミをフルに活用して反対活動を繰り広げていた。
地元では、建設賛成反対派に二分され、険悪なムードが漂い、怪文書が飛び交う事態となっていった。
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