早苗さんに最初に会ったのは、ゴールデンウィークの最中に行われた町会の春祭りの時だった。その日は広沢社長の会社の実習生も多数参加しており、彼女はその引率のような感じで参加していた。とても感じのよい、賢明な女性という印象を持った。実習生からも慕われている様子であり、彼等と嬉しそうに会話を交わしていたのが印象に残っている。

彼女は高校3年生で、将来は大学で国際関係に関する勉強をして、グローバルな仕事をしたいという夢を抱いていた。吉岡自身も大学時代に国際関係論を勉強していたこともあって、早苗さんと気が合い、大いに話が盛り上がった。

「私も学生時代にアジア諸国の経済発展について勉強していました。先進国から積極的な投資を受け入れることに成功した国と、そうでない国とでは大きな差が生まれていますね」

「日本が発展途上国から人材を受け入れることによる貢献はどの程度あるのですか」

「それについては定量的なデータがないのでわかりませんが、外国人技能実習制度は人材の育成という意味ではある程度の役割を果たしているのではないでしょうか」

「自分の会社もそのような事業に参画できて、すばらしいことだと感じています」

早苗さんは嬉しそうに微笑んでいた。

その後も道を歩いている際に早苗さんと何度か出会うことがあったが、その時にはその時々のお互いの様子について軽く雑談を交わすくらいになっていた。

吉岡は大学で勉強していたことがこのような場面で役に立つとは思わなかったが、彼女との会話を通じて、次第に自分の出身校に対する劣等感が解消されていくような気分になっていった。彼女は吉岡に対して、しばしば自分の将来の夢について語っていた。

 

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