では、個人投資家はどのようにバリュー投資家のノウハウを株式投資に生かせばよいのでしょうか。
私は、ROEで十分と考えます。ROEは、当期純利益÷株主資本で求められます。プロの機関投資家がROEで注意する点は、第一に、当期純利益は特別損益等で、時に本業の儲ける力を正しく示さない。そして、第二に、株主資本の少ない、いわゆる、過小資本のバランスシートを持つ企業の場合、ROEが高くなることがあるからです。
それはそのとおりですが、先述のバランスシートが良好な企業、例えば、株主資本が50%を超えるような場合、計算されるROEは十分「使える」数値と言えます。
そして、そのROEは先ほどのWACCやCAPMの6~8%を上回る水準であることが望ましいのです。新聞の証券欄で最近目にするようになった、XX会社が中期計画として、 ROE10%を掲げた、といった場合の10%は、そういうことを意味します。
ROE10%超の企業は、バリュー投資家の投資対象と考えてよいでしょう。バリュエーションが低位で、ROEが高い会社の株価は中長期的に上昇する可能性が高いと考えてよいと思います。ただし、繰り返しになりますが、バランスシートが良好であることが要件です。
PBR1倍割れ企業のプレッシャー
20年ほど前までは、名だたるグローバル企業のトップですら、決算説明会でWACCを下回るROEの中期目標を平気で発表していました。
しかし、今は違います。ROE目標がPBR1倍割れを容認するのかどうかを問われてしまいますから、経営者はあらゆる改革を講じて、WACCを上回るROEの目標の設定に全力を注ぎます。
東京証券取引所が2023年3月に、PBR(株価純資産倍率)1倍割れの企業などを念頭に出した「資本コストや株価を意識した経営」の要請を打ち出したのをご存じの方も多いでしょう。
対象は東証プライム市場とスタンダード市場の会社でしたが、実は、結構厳しい基準です。東証は、2025年3月以降順次、決算期ごとに経過措置が終了し、ここまでに基準を満たしていればプライム市場に残ることができ、達成できなければ上場廃止になるというルールです。
また、基準をクリアすることが困難と判断した企業が、スタンダード市場へと区分変更を望む場合、審査によって承認されることもあると解釈できます。
次回更新は3月15日(日)、8時の予定です。