はじめに

私は、約33年間にわたり、証券会社の調査部門に所属して、株式アナリスト業務(調査・分析)を経験してきました。33年間のなかで、28年間は外資系の証券会社に勤務していました。

私が所属した外資系証券の調査部門の顧客は機関投資家で、日々の調査分析やレポート作成、プレゼンテーションといったマーケティング業務も全て機関投資家向けで、個人投資家向けではありませんでした。

この本は個人投資家の方々が株式投資で資産を増やすための一助になればと思い執筆したものです。ただし、個人投資家の皆さんに、プロの株式アナリストのノウハウを伝授するものではありません。

大量の売買を行うプロの機関投資家のアクションや、株価に影響を与える株式アナリストの投資判断や業績予想の変更が、何を背景に、どのようなタイミングで行われるかを知ってもらいたいのです。

最近、オンライントレードの普及により、各証券会社のオンライントレードツールで、株式アナリストの投資レーティング(格付け)や目標株価のレンジ(範囲)を見ることが可能になりました。

例えば、カバーしているアナリスト数20、強い買い5、買い10、中立5、売り0、というレーティングの構成や、目標株価最高4,000円、中央値3,200円、最低2,800円、といった目標株価レンジを知ることができます。

仮に、直近株価が2,700円だとしましょう。多くのアナリストが買いにしていて、株価はアナリスト目標レンジの最低水準である2800円以下にあることから、一見、この銘柄を今買っても下落リスクは少なく、うまくいけば株価は4,000円に上昇する可能性もあると思ってしまうかもしれません。

私は、株式アナリスト時代、日々、目標株価を算出するために、調査分析、業績予想モデルのアップデート業務を行ってきましたから、見解が異なっていても、各アナリストが付与した投資判断、算出した目標株価を決して軽視してはならないと思っています。