両親の前でつい口を滑らせてしまったというのが実際のところだが、将来のことを何も考えていなかった中で、突然自分の目指す職業を見つけた気持ちにもなった。

祐太朗は残りの高校生活を声優学校探しに費やし、両親もそれを応援した。

そして、高校を卒業して東京の声優学校に入った。もともと声優のことに詳しかったわけではない沢村だったが、声優学校に行くと決めてからはとにかく情報を収集し、いつしか声優オタクとなっていた。

有名声優の台詞やナレーションを聴き込む一方、自宅の押し入れを改造して自作の簡易収録ブースを完成させ、好きな声優のコピーを始めた。専門学校には真面目に通い、最も模範的な生徒として表彰もされたほどだった。

社交的とは言い難い性格の沢村は、学校内の舞台発表ですらメインの役をやることはなかったのだが、声が低くよく通るといわれ、声優事務所からは多く声が掛かった。

決して派手ではない真面目な性格の沢村が大手声優事務所からも声が掛かったのは学校としても嬉しく、本人がどこを選ぶのか注目されていた。

自他ともに認める声優オタクとなっていた彼は、講師として来ていた第一線の声優を通じて、オーディションには来ていなかった赤坂事務所を紹介してもらい、見事に預かり生となった。

預かり生になってからの沢村は、それまでと変わることなく、真面目にレッスンに参加し、研究も怠らなかった。

ただ、声優学校時代と違って、レッスンでの手応えは全くないまま一年近くが過ぎようとしていた。

声優学校時代は、周囲の仲間はみんなゲーム好きで声優好き。彼のオタクぶりは貴重な存在として受け止められた。

しかし赤坂事務所の預かり生としては、その声優オタク的性質はむしろマイナスイメージだった。

有名声優を真似た芝居も痛烈に批判され、年度の後半は台詞に対する恐怖感さえ生まれるようになっていた。

 

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