第六章 デキ婚なんてありえない
小柄で小動物のような可愛らしさのあるルックスと、きめ細やかな白い肌の持ち主の彼女だが全く色気というものを感じられなかった。私が女だからそれを感じ取れなかったのかもしれないのだが、とにかく女というものを出さない人だった。いつもあっけらかんとしていて、まるで中身が子供のまま身体だけ大きくなったような純粋さがあったのだ。
宮本さんがセックスをするところなんてどうしても想像できなかったし、したくもなかった。だが宮本さんは私より四つも年上で彼氏もいる。セックスをしていて当たり前だったのだ。
妊娠の可能性は充分にあった。しかしいざそれを告げられると、私はなんだか不思議な気持ちになった。その時私には確実に宮本さんの未来が見えたのだ。それは生まれて初めての感覚だった。
あの髭ピアスの男との子供を育てながらも相変わらずコンビニでパートをする、宮本さんの未来。私はそれからデキ婚というものを軽蔑するようになった。
なぜ避妊をしなかったのか、そんなことは当事者にしか分からない。もしかしたら避妊をしたがそれでもできてしまったのかもしれない。しかし私にはどうしても自分の一瞬の快楽のためだけに女性の人生を決定してしまう身勝手な行為に思えてならなかった。