「今日会ってみて、全く変わってない姿に少し安心した。想像してたより、元気で普通で少し肩透かし食らったよ」
その率直な言葉が嬉しかった。何よりも自分が思っているより、側から見たら病気なんか患ってない、どこにでもいる昔から変わらないフクイケンイチだったようだ。
安堵した私は、注文に来た店員に追加のビールを注文する。
「安心したからって図にのるなよ」っと釘を刺されたが、それも昔と変わらないやり取りだったのか、二人には笑みが溢れている。
なんだかんだ近況報告に花が咲き、時刻は21時を過ぎていた。久しぶりの田町だというので、もう一軒ハシゴすることになり、私はある男に電話を掛けている。
「おう! ケンボー! どーしたのかな?」ヒデジは1コールで出た。
「店やってるー? 今近くで飲んでて、一人連れて行く」
「また新しい女か、相変わらずお盛んだな、お待ちしておりますわ!」
私達は、ここから徒歩1分のヒデジの店に向かうことになり、会計の準備をする。私はサエに財布ごと渡した。
「こっから全額払っといて、奢るわ」
彼女はボロボロになったブラックとゴールドのストーンがちりばめられた財布を手に取り、半ば呆れた表情で、
「その言い方!」
「そしてまだ使ってるのこの財布」
私が5年近く使っている、使い込んでいる財布は、サエに初めてもらった誕生日プレゼント。
未だに使っているがさすがにボロボロで、合皮の皮は剥がれ始めていた。
その財布を手にし、会計しているサエの後ろ姿を自動ドアのガラス越しに、店の外で見つつ、まだ元気に動いてくれている左手でタバコを持ち口に咥え、左手でライターをつける。
付き合っていた際の、右手が動かないことをバレないように接していた頃の、自分の姿が目の前に現れる。
次回更新は2月28日(土)、14時の予定です。
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