【前回の記事を読む】「相撲の方に集中してくれたらええ」桜田部屋の借金を引き受けた望月――右近はいつしか「竜女」と呼ばれ始め...
二
道長は後援会会員を増やすつもりは無かったので、片っ端から断っていたが、断られた者の中で望月と旧知の仲で、放送会社を傘下に持つ日ノ出(ひので)グループの紀貫子(きのかんこ)会長と、自動車会社千騎(せんき)の柿本優(かきもとまさる)会長は、道長にしつこく入会を願い出た。
望月は「君があかん言うたら、あかんのや。あいつら、強引なやり方で結果出す生き方しかでけへんから、相手の都合とか考えへんねん。あいつらは入れんでええから」と怒っていた。
道長は、望月と二人の仲が悪くなることを懸念して、仕方無しに二人も後援会に入会してもらった。
桜田部屋は女相撲マスコミに協力的でないことから、彼らから徹底的に叩かれるようになった。
女相撲マスコミの記者は、支度部屋で会見をしてくれない右近に、花道で戻る際に色々と質問するが、雷子にしっかりとガードされている右近が、その質問に答えることは無かった。
ある日、女相撲情報誌の老舗である女相撲通信の伊周(いしゅう)という記者が「我々を馬鹿にしてるから質問に答えないのか」と大声で、右近達に詰め寄ってきた。
右近は、びっくりして固まったが、雷子は即座に反応し「失礼なのは、そちらでしょうが。右近関は最初から話さないと言ってるじゃないですか」と、大声でやり返す。
雷子は身体も大きいが声も大きい。お客さんも土俵ではなく、こちらに注目している。
再度、伊周が文句を言ってきたので、雷子が向かって行こうとするのを、右近が袖を引っ張って止めた。様子を見ていた道長が間に入り、伊周と言い合いになる。
後は道長に任せて、右近と雷子は支度部屋に戻ることにしたが、支度部屋の前に、雑誌のスタッフと思われる男三人が待ち構えていた。
まだ、怒りが収まっていない雷子は「何ですか、貴方達は」と詰め寄る。
巨体の雷子に詰め寄られ、リーダーの佐波(さなみ)という記者が怯えながら「女相撲ジャーナルの佐波と言います。大関の支度部屋で会見を行うと聞いていたので、ここで待っていたんですが」と答える。
雷子は、同じ大関の和泉式部の支度部屋と間違えたのだと思い、右近を支度部屋の中に入れ、三人をそのまま外で待たせて、和泉式部の支度部屋に確認しに行った。
和泉式部は「雷子さん。それ、新しく出来た女相撲雑誌の連中だわ。悪いけど、こっちに回って来る様に、伝えてくれない」と言った後に「雷子さん。通信の記者とやりあったんだって」と笑顔で聞いてきた。
「ええ、右近関が止めなければ、張り倒していました」と雷子が答えると
「張り倒しゃ良かったのに」と言って、和泉式部が笑う。支度部屋の隅に、伊周が居る事を判った上で言っているのだ。