曼殊沙華の徒花
――咲いたがゆえに、誰よりも赤裸にされてしまう花がある。
全く山のヤツときたらすっかり澄まし顔でムードまですかしてて気に入らない。
ところどころに背伸びした杉の梢がびゅうびゅう風に吹かれて、ああもうこんなに揺らされるなら身長伸ばさなきゃよかった、と叫んでいる。
難儀なものよなぁ。目立ちたがりが過ぎるからそうなるのだよ。ついでに私の悩みもこいつ、引き受けてくれないかしら。
何たって私は今心が重い。いや、重いというか、沈んでいる。それも、太陽のような沈み方ではない。
そもそも太陽のヤツなんてのは、どうせ半日後には何食わぬ顔で、酔っぱらったような朝帰りの赤ら顔を、禿げ頭に射返して、煩(うるさ)い光で人を叩き起こす癖に、沈む時もこれ、いちいちネチネチと寂しがって酒を煽り、呑まなきゃやってられんよと、赤ら顔で星々の経営する夜の飲み屋街に消えていくのだ。
かまってちゃんにも程がある。なんという厚顔無恥か。恥を知れ。私はお日様に怒った。
もっと君は、慎ましさを持った方がいいな。いや、別に月のようになさいとかいうのではないよ。
月なんてあいつ、あんたの光で夜を我が物顔にしてさ、それでおいて、いや自分はそんなに照らしませんから。
人様の足元を薄ら照らす程度の役に立たない丁稚でございますから。でもほら、そんな奥ゆかしさが美しいでしょう。どうぞ詩に詠んでもらってもいいんですよ。
なんて気取っている。全く図々しい。破廉恥だ。月の面の皮は鉄でできているのかしら。鉄面皮ってやつ。一人仮面舞踏会。
私は月を軽蔑した。次から月ではなく鉄子とでも呼んでやろうと思った。