渚の住んでいる所は、かつて鉄の都として栄えた福岡県北九州市の八幡という一地方都市である。地区のシンボルはなんと言っても皿倉山でそこから見下ろす眺望は新日本三大夜景にも指定されている。

しかし、渚が思うに皿倉山の本当のいいところは近くで誰でも気軽に自然が満喫できるところにあると思っている。

渚は、幼い頃から父・善行と『山歩(さんぽ)』と称して皿倉山を何回も登ったものだった。

皿倉山は標高622m、決して高い山ではないが、昭和十二年に完成した皿倉登山道は帆柱十五景と呼ばれ大扇望、達磨岩、鶯谷、天狗岩、皇后杉等、仙人が出てきそうな名前がつけられている。

下から見上げるとどっしりとして、渚は秘かに『八幡富士』と呼んでいた。春には桜や梅、夏には向日葵や紫陽花、秋には秋桜や銀杏、冬には椿や山茶花と言った花木が迎えてくれる。

渚は、皿倉山の懐に抱かれてすくすくと成長していった。

渚は、現在北九州SDGS大学生命探究学部二年生として学んでいる。そこを選んだのは、オープンキャンパスの時に三階の窓から皿倉山と隣の権現山が並んで見えたからだった。

渚の住んでいる所からは皿倉山は見えても権現山は見えない。ダブルマウンテン!! こんなに素敵な景色の所で勉強したい!

山をこよなく愛する渚は、その思いだけで当時絶対に無理と言われた偏差値をものともせずに合格したのだった。

自分自身では、合格できたのは中学生から持っているスマホのおかげだと思っている。

 

👉『積善の家に余慶あり』連載記事一覧はこちら

【イチオシ記事】愛妻家のはずの夫が初めて朝帰り。「ごめん、これ見て」と見せられた動画には、ホテルでされるがままの夫と、若い女が…

【注目記事】3月上旬、がんの手術のため妻が入院。腫瘍が3カ月で約3倍の大きさに。全部取り切り、何も問題はないと思っていた、その時は。