「何とも無いって、どうしてそんなこと訊くの?」

美紀もそんなことを訊く美智子を不思議に思った。

「だって、美紀ちゃんのお父さんは幹也君のお母さんと不倫して自殺したんやろ?」

「不倫て?」

「う〜ん、よくわからへんけど浮気のことやと思う。お母さんが家でそう言うとった。美紀ちゃん、お父さんは浮気が原因で死んだこと今まで知らんだん?」

恐らく母親が町で拾って来た噂話を家で聞いたのだろう美智子は訳知り顔でそう言った。

そのとき、美紀は下を向いて教室の床を箒で掃いている幹也の方をチラリと見たが、父の自殺の原因が幹也の母にあると聞き、男である父親が何か悪いことをしたのかとの思いは持ったが、幹也を恨むような感情は湧いてこなかった。

ただ、幹也の母親はそのことが原因で幹也を残し一人で町を出て行ったと美智子がつけ加えたことで、自分と同じように親が一人になった幹也の寂しさを思う気持ちだけは胸に残った。

次回更新は2月8日(日)、22時の予定です。

 

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「亭主を自殺に追い込んだ悪妻」と母に悪い噂が流れ耐え忍ぶ日々…世間が自分たちの味方ではないことを知った

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