・逃げる

離婚の時期は、思っていたよりもずっと早く来た。子連れ離婚、再就職したばかり。仕事も今後の生活も見通しがついていなかった。本当は離婚せずおさまることを願っていた。穏やかに暮らしたかっただけだった。しかし、私の復職が正式に決まったその夜から、夫は豹変した。

夫に、「これで高給取りになったと見せびらかしたいのか」と冷ややかに言われ、祝杯のはずの食卓が凍りついた。子どもたちにも緊張感が走り、あまりの恐怖に何を食べたのかさえ覚えていない。日ごとに進行する家庭内暴力の状況を、もう再度、警察に相談するしかなかった。

刑事さんから、「奥さん、かなり深刻なDVです。早く遠くに逃げてください」と助言された。目の前が真っ暗になった。そして、夫から、「あなたに家から出て行ってほしい」と言われた。なぜ私が家から出て行かなければならないのか。何を言われているのかまるでわからなかったが、暴力から逃れるために、私が家から出るしか安全な方法はなかった。

私は、警察の助言のもと、すぐ入居可能な小さな古いアパートを借り、一時別居という形で逃げた。まもなく次男をそのアパートに引き取り、長男には学生用アパートを借りて、子どもたちも父親のもとを離れた。

別居による冷却期間をおき、双方弁護士を立てての離婚協議が始まった。逃げるように、先が見えない不安の中で、仕事に追われながら、次男を養育しながら、思い返すだけでぞっとする。

次回更新は2月7日(土)、20時の予定です。

 

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