【前回記事を読む】「ドアを開けてくれません…」独身で一人暮らしをしている女性。近所付き合いもほとんどなく、発見が遅くなってしまい……

第1章 利用者さんとずっと一緒

私の保険証がない!

高井さんは85歳のおばあちゃんです。徐々に認知症がひどくなり家族が毎日世話をするのが困難になってきました。そこで服部の施設で週3回お泊りをする事になりました。

高井さんはなぜか医療保険証と介護保険証を肌身離さず持っています。小さなポーチを肩にかけ、その中にいつも保険証を入れています。サービス変更のため保険証の確認が必要になったので、大江が保険証を預かった時、高井さんが、

「私の保険証がない!」

と言い始め大騒ぎになった事がありました。そこで服部は本物の保険証を施設で預かり、色紙に『保険証』と書いた偽保険証を作り、

「赤いのが病院の保険証、青いのが介護の保険証よ」

と言って高井さんに持たせました。高井さんはその保険証を本物の保険証と思い込み、大事にポーチに入れていました。

ある日、施設で昼食を食べている時、高井さんが服とポーチにお汁をこぼしたので、偽保険証の事を知らない堺が、ポーチの中を確認せず洗濯してしまいました。

偽保険証がぼろぼろになったので、堺は偽保険証と気づかずゴミ箱に捨ててしまいました。高井さんは、大事な偽保険証がなくなったので、興奮し落ち着きなく施設を徘徊しています。

施設の従業員総出で本当の保険証がなくなった、と思い込み探し回っています。その中で一人だけ色紙に何か書いている人がいました。

「保険証あったよ!」

服部が作った保険証を見て高井さんは、

「保険証が出てきた。良かった、良かった」

と偽保険証を大事そうにポーチにしまい込んでいました。探し回っていた従業員は偽保険証と知って呆然としていました。

「私達、必死に探していたのは色紙?」