【アインマーヌズル20日(4月10日) 出航/曇】

9世紀の北欧、私はスヴィティヨードに数あるフィヨルドの奥深くの村に生まれた。 ある時、ルーシーの貴族の一団が来た。かの国では豪族間の争いが絶えず、国がつねに混乱しているという。この地の勇者にルーシーに来てもらい王となり国を治め、平和をもたらして欲しいと懇願した。

17歳の私は家族に別れを告げ、船団の漕ぎ手としてその旅に加わった。

父と兄は私の旅立ちを理解してくれたが、母と幼い弟や妹たちは私の決断にひどく悲しみ、見送りに来ていた桟橋の上でも涙が止まらない様子だった。特に仲の良かった直ぐ下の妹の泣きはらした顔を見るのは辛かった。それでも今回の船団の一員になりたいという決心は変わらなかった。

わが船団を南に住む人々はバイキングと言って恐れた。しかし我々は元来、通商の民であり、むやみに殺戮はしない。私の漕ぐ船は1枚の帆を持ち、普段は風の力で進む。外洋の航海にも河川を遡るのにも適している万能の船であり我々の力の源泉だ。

私が乗り込んだのはロングシップと呼ぶ最大級の船で、それでいて旋回することなく前後どちらの側にも進むことができる。風のない時には両舷それぞれに25人から30人の漕ぎ手が櫂を漕ぐ。全長はおおよそ130フィートでその姿は貴婦人のように優美であり、船首と船尾は竜の彫刻がなされている。

1隻に乗り込む70人の漕ぎ手は全員が死を恐れない戦士である。死ねば我々の魂はオーディンのところに行くだけだ。

船団は無事にバルトの海を抜けた。途中、商売を終えた隣村のバイキング船とすれ違った。どうやら商売が上手くいったようだ。

この辺りの海は我々の庭のようなものだ。地形や海流はすべて頭に入っている。だから昼間だけでなく月明りのもとで夜間も航海を続けることができる。

しかしブリテンやフランクの海岸を過ぎてからはそうはいかないだろう。海岸の状況や風向きや海流によっては暗くなってからの航海は非常な危険を伴うので避けなければならない。その前に適当な停泊地を見つけて翌日の日の出を待たねばならない。