プロローグ

暗黒といわれた中世ヨーロッパの一角で、湧き上がる民族のエネルギーを爆発させた集団がいた。

北方の厳しい自然環境の中で懸命に生きる彼らは、優れた航海術と卓越した造船技術を駆使して、富と栄光、そして何よりも自由を求めて世界の各地へと旅立っていった。

ユトランド半島に根拠を置く一団はブリテン島やアイルランドやフランクへの侵攻を続け、ノールウェグ(現在のノルウェー)に住む一団はアイスランドやグリーンランドやそのかなたのヴィンランド(北米大陸)を目指した。

そして、スカンディナビア半島東岸のスヴィティヨード(現在のスウェーデン) の一団はノブゴロドや大陸内部に拠点を築いていった。さらに、その一部はルーシー(現在のウクライナ周辺)の中心に達し、後のキエフ大公国と発展していく。

彼らの前に広がるのは地中海世界の高度な文明圏。

西にはカール大帝の死後、分裂と統一を繰り返すフランク王国があり、その東には東ローマ帝国(ビザンツ帝国)がコンスタンチノープルの宮廷を中心に繁栄を謳歌していた。 そして南にはギリシャ、ローマの古典文化を吸収したイスラム諸国が高い農業生産力とアジア交易の独占を背景に富み栄えていた。

時は9世紀、北の海と深い森に囲まれたスヴィティヨードの地に生を受けた一人の若者が今、冒険航海の旅に出る。