【前回の記事を読む】彼は私を強く抱きしめ、愛していると言った。私には夫も子どももいるのに…。それからおよそ30年、彼との不倫関係が始まる
1 出会いと恋の始まり
恋のはじまり
照将さんは、
「おはよう 今日は○○します 気をつけてね」
「お休みなさい 今日は○○だった」
およそ三十年、毎日欠かさず連絡をくれます。最初の頃は電話で、途中からはメールで朝夕は必ず忘れずにしてきました。
私も、
「おはよう 今日も良いお仕事してください 気をつけて出かけてくださいね」
「お疲れさま ゆっくり休んでね」
と返信します。
私は、最初から不倫の関係を望んでいたわけではありません。
しかし、照将さんが生い立ちや出会った頃の状況、気持ちを話すのを聞いて、私にできることをしてあげようと思いました。彼の抱える孤独を感じたのです。
好きだった女性と結婚できず、親が子どもの頃に決めた相手と結婚するしかなかったこと、好きだった人は若くして亡くなったこと、奥様とは部屋を別にして暮らしていて、奥様から部屋を別にしてほしいと言われたこと、夜の夫婦生活も今は無いと話す時の寂しげな顔は忘れることができません。
この人は、孤独の中を生きてきたのかもしれないと思いました。私と男女の関係になった日に「これからも、妻とは別の部屋で生活する。一緒に寝ない。洗濯や身の周りのことは自分でする。心配や不安にはさせないよ」と言ってくれました。
夫と子どものいる身ではありますが、私を必要とするなら、不倫であっても役に立てるよう精一杯尽くそうと決心しました。
今年も沈丁花の花が咲いた
母が好きな花だ
その花にあでやかさはないが
愛しくぬくもりのある花だ
豊かなかおりをただよわせ
そっと木かげに咲いている
いつかそんな人に
会えるような気がする
(照将さん作)
自宅に咲いた蝋梅の小枝をそっと私に差し出し、詠んでくれた詩です。
照将さんは、「この言葉を忘れないでほしい、書き留めて持っていてほしい」と言いました。私は、暗闇の車の中で、室内灯を頼りに、その時持っていた手帳に何度も言葉を確かめながら書き留めました。その手帳は今も大切に持っています。
私は、形が欲しかったわけではありません。私を思ってくれる気持ちだけで嬉しかったのです。