みよこは薄手の毛布に身を包み、胎児のように丸くなり亡くなっていた。外傷は一つもなく絞殺された痕跡もなかった。凍死には間違い無いのだが、どうして見も知らぬ人間のトラックに毛布を持ち込み寝ていたのか。

そしてみよこ一人では、到底あの高さのトラックに乗り込むことはできない。いくつもの謎が今更のように加賀の脳裏に浮かんできた。季節を問わず同じ服装だったというのもおかしな話だ。そして大事に抱えていた赤い鞄。

みよこの拙い文字が加賀に話しかけるようだった。

「おじちゃん、さむいよう死んじゃうよう」

白い紙切れが加賀の頭上にハラハラと舞い落ちてきた。

「ごめんな、もっと早く見つけてあげていれば」

ポケットから取り出した写真に向かって加賀は涙声で話しかけた。

赤いテープが貼ってあるためみよこの顔は見えないが、あの日眠るように亡くなっていたみよこの顔は、加賀の脳裏に焼き付いている。

テープに眠る可愛らしい顔を思い浮かべ、優しく撫でた。

「加賀さん、組関係の聞き込みをしている時に、変な話を耳にしたんですが」高橋が息急(いきせ)き切って駆け寄ってきた。

「何だよ、変な話って」

上司から組関係の聞き込みに回れと言われた加賀は、渋々暴力団抗争の事件に着手し始めたところだった。

「行った先の組は直接今度のヤマとは関係なかったのですが、面白いことを聞いたんですよ。何でも下っ端(ぱ)のやつの話によると、そこの組長が一週間ぐらい可愛い女の子の面倒をみていたらしいですよ」

「えっ何だって? 女の子?」

加賀はもうみよこの話は誰にもするまいと決めていた。事件性のないものにいつまでも執着していては、刑事として失格だと自分で決めたことだった。

だが、高橋の持ってきた話を聞いて、加賀の頭上にまた白い紙切れがハラハラと舞い落ちてきた。

「どこの組長だ?」

加賀は高橋から詳細を聞くと、今度はちゃんとコートを手にして出て行った。

次回更新は1月27日(火)、21時の予定です。

 

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