【前回の記事を読む】「お父さんに“暴力”ふるわれたから家出したの」本当のところ、父に家の中で何をされたか——先生の前では言えなかった。
第一章 壊れた家族
野口は恵理が遠くに行ってしまうことに落胆の気持ちを隠せなかった。
更に、役場に対して直前の辞退とあっては役場と自分、そして校長との信頼関係が壊されることになる。しばし、言葉を失った。
「まあ、ここじゃあ何だから上がって上がって」
玄関先から部屋の中に恵理を招き入れた。
「お邪魔します」
「まあ、散らかってるけど、かけて」
「あ、今ご飯食べてたの?」
「そうだよ」
何気ない会話をしているうち、恵理の決意の強さを痛感し、恵理の夢を叶えてあげたくなった。
「わかった。明日、役場に小川が辞退すると話しておくよ。東京はいいぞー。君は東京で可能性を追求しなさい。僕も応援するよ」
「ありがとうございます」
「そうか、君は東京に憧れていたんだな。それを早く知っていれば役場は斡旋しなかったんだけど。小川よ、大志を抱け! 東京で一旗揚げてこい」
「野口さんにすっかり迷惑かけちゃって。すいません」
「いやいや、迷惑なんかじゃないよ。教え子の将来を考えてあげるのは担任として当然。これも、少人数の生徒であるが故により深く指導できるんだよ」
「野口さん、押しかけてきて図々しいんですけど、今夜1晩泊めていただけますか? 私、友達がいないんで、野口さんだけが頼りなんです」
「いいよ、こんな汚い部屋で良かったら、泊まっていきなさい」
「ありがとうございます」