一方、バーマンの女神様は長毛種特有のまばらな長い毛が混じりその手触りはミンクのような柔らかさ、サファイアブルーの目が愛らしい。

それがヌシの足元にまとわりつく。綿菓子のようにふわふわの、子ねずみよりも小さい白猫だ。なまいきに鼻の頭だけがつんと黒い。これじゃあ、飼い主を守るどころか、厄介なお荷物じゃないか。

飼い主が外出している間は、ヌシが面倒をみる羽目になった。ヌシはただずっとシャーシャー言っていた。それがヌシのプライドだったかもしれない。

きっと最期の瞬間までシャーシャー言っていたはずだ。生後二か月あまりの女神様は、日中ケージの中で過ごす。あまりにも危険が多い家の中の、一番の脅威は部屋の「隙間」である。迷い込んだら脱出できないのに、子猫は隙間という隙間に入り込むのが大好きだ。

バーマンはあまり鳴き声を出さない猫らしいが、嫌なことがあるとちゃんと声を出す。帰宅すると、お帰りの抱擁とごはんをもらって、ケージの外に出してもらえる。

ぴいぴいと鳴きながら、しがみつくのを引きはがしたり、またそばに寄せたり。ヌシはその一部始終をじっと見ていて、何もしないのだが、こちらが目を離した隙に、子猫がどの隙間に入っていったかを教えてくれる。

十四歳のヌシは、人間としか暮らしたことがないのに、そういうのは本能なのか、女神様が寄ってくると顔ではシャーと言いながら、尻尾を振って遊んでくれていたりする。

 

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