第三章 女神様に教えるヌシ

初めて女神様を家に連れてきた時の、あの不機嫌そうなヌシの顔は、思えば、わたしが初めてヌシを見つけたあの時の表情だった。

信頼する心、飼い主に寄せた全部の気持ちを無にするような小さい新しい「何か」。長年家を守ってきた猫にとって変化はいつも突然訪れる。

女神様はまだ生まれて二か月のよちよち歩きの赤ん坊だ。

先住猫としては、これほど厄介な新参者はいない。おまけにこのチビの面倒を見ろと言わんばかりのわたしからの期待感がすごい。狭いながらも住めば都の我が領域にいきなり土足で乗り込んできた(白足袋は履いているが)。

まずは、誰がここの主か叩き込まねば、ということだ。

ヌシは一目も置かずスタスタと女神様の前を横切り、そのまま机の下にもぐって様子を探る作戦に出た。が、それも一日も経つと、疲れたのか気がつくと机の下で寝ているヌシの足元に女神様が寄り添って寝ていた。

そもそも高齢のヌシにとって、自分の後を継いで飼い主のお守りをしてほしいと望んだのは、もっとたくましく若い頃のヌシのような猫だったかもしれないのに、飼い主が選んだのは、ヌシと真逆の猫だった。

アメショーのヌシは白黒のタビー柄で気の利いていそうな、いぶし銀の瞳、すらりと伸びた肢体はいかにも機敏なネコ科の典型のようだ。