そんな中で、ある日、近所の人が、その白猫のミーちゃんを連れ去って仕舞った。
多分、白猫のミーちゃんは、猫の専門業者の所に持って行かれ売られたのだろう……。
「何で人の猫を……」
犯人の見当は付いていた。悔しがるたかちゃんに、お婆さんが、
「いいかい、たか、ミーを連れて行った者に、文句を言えば、そういう輩はもっと酷い事をしてくるんだ、分かるだろう?」
この時代は、動物の命などは、今ほどには重くなかった。
婆さんが言う通り、たかちゃんは、犯人が酷い人間だと知っていた。
敢えてそれを追及すれば、その人物は、更に酷い事を、たかちゃんの家族にしてくるに違いなかった。
悔しい気持ちは有ったが、幼いたかちゃんには、それをどうする事もできない。たかちゃんには、可哀そうな白猫の運命までは助ける事ができなかった。
ある夜に、寝ているたかちゃんの前に、白猫のミーちゃんが現れた。
「たかちゃん、たかちゃん、私は、たかちゃんの事が大好きよ」
「ああ、ミーちゃん、ごめんね助けられなくて」
「いいのよ、たかちゃん、あのね、たかちゃんは死んじゃ駄目よ」
「私、死んだりしないよ」
「私はたかちゃんのお母さんだから言いに来たのよ。諦めちゃ駄目よ、私も力を貸すからね」
「うん、ミーちゃん、ごめんね。私もミーちゃん大好きだよ」
「ああ、たかちゃん! ずっとずーっと先で、また会いましょう。私がまたたかちゃん
のお母さんになってあげるからね」
その時の夢は、何がなんだか分からなかったが、しかし、この後に、たかちゃんに災いが降り掛かると、ミーちゃんがなぜ言いに来たかが分かった。
ミーちゃんがいなくなり、お婆さんの家には、一匹も猫がいなくなって仕舞った。
たかちゃんに譲ったミーちゃんが、近所の人に連れ去られいなくなった事を、前の飼い主が知った。