少し興奮冷めやらない長谷川は上気した面持ちで話を続けた。少し意識して声量を上げて、
「皆さんは歴史ある会社に勤めていますが、いつまでも太平の世が続くわけがないので、技術の進歩に乗り遅れないように日々研鑽して発展していくように共に頑張りましょう。
又、私の部屋はいつも開放していますので遠慮なく入って来てください。今日、仕事の関係でここに出席出来なかった社員の人たちには別途お目にかかる機会もあると思いますので、これで私の就任挨拶といたします」
と締めくくった。
社員たちの間では「何だ、これで終わりか」と小言を言う人もいたが社員たちのまばらな拍手でお開きとなり、塩見は安堵の表情を見せていた。塩見は「お疲れ様でした」と多少作り笑顔で労をねぎらった。
長谷川は自室に戻って行ったが、社員たちの一部の人は会議室に居残り、それぞれが同僚たちと初顔見世の場の評価をしていた。「気が短い性格だね、これからうまくやっていける?」と疑問符で率直な感想を述べる人や「大物の風格じゃないね」と品定めしながら自分の持ち場へ帰って行った。
業務部長の大河原は最前列で聞いていたが、隣の部下に「高そうな背広を着ていたね」と首を左右に振りながら服装についてだけ感想を述べていた。部下は「分かりますか」と言うと「艶が違うよ」と言い残して歩き出した。
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