社会人となったハギの休みは不定期で、デートの為にはこちらが休みを合わせる必要があった。私が就職できなかったことを知ったアルバイト先の店長から、何度か正社員にならないかと打診されたのだが、自由に休みが取れるフリーターという立場から脱却するのが嫌で、結局断った。

「別に正社員同士でも、時間作って会えると思うけど」

正社員にならない理由を言うと、店長の近藤さんはそう言って首を傾げた。彼は大柄で頼れる皆の父親のような存在だった。公私共に色んな相談に乗ってくれ、フリーターとなった私を気遣い好きなだけシフトを入れさせてくれた。そうして稼いだバイト代も、デートに着る服やデートの前のエステや美容院代などに消えていった。見栄を張り、無理をして高級外車を買ったのもこの頃だ。

ハギは気合を入れてデートに臨む私を見て喜んではいたが、全ては私の自己満足に過ぎなかった。それでもデートというものを半ばイベント事にして、私は心からそれを楽しんでいた。

ハギは見てくれが良いので、二人揃ってうんとおめかしして良い車に乗り、小洒落たカフェやデパートに行くのが私はたまらなく好きだった。

絵になる二人。傍から見ればまさに理想のカップルに見えたであろう。そんな周りからの羨望の眼差しを目一杯浴びて、私は思春期に得られなかった優越感を存分に味わって いた。

そして、夜は本当のエクスタシーを感じることができるセックスをする。ほんの数年前まで、セックスのあとついつい眠ってしまい、朝帰りをした私をふしだらだと言って祖母は激しく罵った。

しかし、いつしか祖母は私がいくら朝帰りをしても何も言わなくなった。そしてハギのことを近所の人たちに、孫の婚約者だと話すようになっていた。