特殊効果の現場から見るハリウッド映画の裏側
例えば、『アナベル 死霊博物館』(2019年)という映画にも関わったことがあります。
これは『ワイルド・スピード SKY MISSION』(2015年)や『アクアマン』(2018年)、『アクアマン/失われた王国』(2023年)を手掛けたオーストラリア出身のジェームズ・ワン監督による、非常に人気のあるホラー映画シリーズの一つです。この映画は2019年に全米で公開され、約30,000,000ドル(約43億円)の製作費が投じられました。
不気味で、そして魂がこもっているような目をしたアンティーク人形のアナベルが印象的なポスターで知られていますが、私はこの映画で「マルサス」(口絵写真1参照)という羊のような角が生えた漆黒の悪魔と「ヘルハウンド」(口絵写真18参照)と呼ばれる巨大な狼男の造形に制作チームの一員として携わりました。
マルサスの制作は、モンスターの大まかな姿をフォトショップを使って二次元化させたコンセプトデザインから始まり、「シリコン」という柔軟性のある特殊素材を使ってモンスターを演じる役者の体の型を取り、その上に専用の油粘土を使ってモンスターの形を造形していきます。
ヘルハウンドの粘土彫刻の様子。大きい造形物には水粘土がよく使われる。作業中は、乾燥によるヒビ割れを防ぐために、こまめに霧吹きをする(提供:Fractured FX)