序章 夢を掴むためのヒント
テレビに映るマジックや手品を見て「あっ!」と驚いたことはありませんか? あの瞬間、観客の目が点になるような表情――私は、あの驚きを生きがいにしてハリウッドのエンターテイメントの世界で働いています。
映画やドラマの映像作品の中で繰り広げられる「魔法のような手品」は「特殊効果」や「SFX(Special Effects)」と呼ばれます。現実には存在しないキャラクターやモンスターにリアルな形を与え、まるで本当にそこにいるかのようにスクリーン上で動かす。それが、私の仕事です。
2005年に渡米し、映像制作を学んだ後、いくつものハリウッドの特殊効果スタジオでキャリアを築いてきました。
例えば、DCコミック原作の大ヒット映画『アクアマン』(2018年 ※日本劇場公開年。以下同)に登場する恐ろしい深海のクリーチャー(架空の生き物)や、世界的ミュージシャンのアリアナ・グランデが出演する短編PV映画『Brighter Days Ahead』(2025年)で、彼女がシワだらけのチャーミングな老婆へと変貌する特殊メイクの制作にも携わっています。
そして近年では、副業として3Dプリントの技術を使った、粘土造形のツールの制作販売を行いながら、日本の夢を追う若者たちに向けた教育活動にも力を入れ始めました。
この本が発売される2025年には、私がアメリカに来てからちょうど20周年を迎えます。私は18歳で、長野県にある小さな田舎町から、たった一人でアメリカに渡り、多くの不安を感じながらも挑戦を続けてきました。
この本には、異国の地に放り込まれ、何も分からず、英語も満足に話せなかったあの頃の青年だった自分が、やがてハリウッド映画で世界中の人々に夢を届ける仕事に就くまでの道のりが綴られています。その過程は、きっとあなた自身の道を模索するヒントになるはずです。