【前回の記事を読む】地球という“生命”に向き合う——冷静な理性の奥に、「人類が自らを制御しなければ地球を失う」と警鐘が響く

1.地球と二酸化炭素(CO2)ガス

〈概要説明〉

地球上の炭素は大気、陸、海、地中の堆積物間を循環している。現在、それぞれに蓄えられている二酸化炭素量とそれぞれを移動する二酸化炭素量を図1-1に示す。直近2000年間の二酸化炭素濃度変化を図1-2に示すが、この図より、産業革命以降に二酸化炭素濃度が急増していることがわかる。この章では変動の要因についても触れる。

1-1 地球の大気

現在、地球を覆い包んでいる厚さ約100kmの気体(大気)は酸素、窒素、及び温室効果ガス(CO2その他)より成っており、酸素と窒素は大気の98%を占めている。

ここに至るまでの大気の変遷を以下に要約する:

約46億年前、地球が誕生した頃の大気は二酸化炭素、窒素が含まれていたものの、大部分は高温、高圧の水蒸気であったと考えられている。その後、徐々に地表が冷え、水蒸気が雨となって地表に降り注ぎ数億年後には海ができた。

大気の主成分は二酸化炭素と窒素になったが、二酸化炭素は海に溶け込み、その一部がカルシウムイオンと結合して石灰石となって海底に堆積した。後に、海底が隆起して、それがセメントの原料として利用されていることは周知の事実である。

この段階で大気の主成分は窒素になったと推定されている。約27億年前、太陽のエネルギーを利用して光合成を行うラン藻(シアノバクテリア)が海中に誕生し、二酸化炭素と水から有機物と酸素が生成されるようになった。

この現象により大気中の二酸化炭素はさらに減少し、酸素が増え始めた。大気の酸素の一部は太陽からの紫外線で化学反応を起こすことによりオゾンが生成され、大気上空でオゾン層が形成されるようになった。

オゾン層は生物にとって有害な太陽からの紫外線の多くを吸収するため、海で誕生した生物が陸上に進出できるような環境になった。

陸上進出した多様な生物による光合成が活発に行われることで、大気中の二酸化炭素が生物に取り入れられ、同時に酸素はさらに増え、長い時間を経て窒素と酸素を主成分とする現在の大気になった。

大気に存在する温室効果ガス(CO2)の量は760Gtである。因みに、光合成で二酸化炭素を内部に取り込んだ植物、藻などの有機物が海底に堆積し、地圧と地熱の作用を受け、石油や石炭になったと言われている。