第一章 出逢い ~青い春~
二
翌日、優子は、柚木のカウンセリングを受けに病院へ行った。待合室では、モーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」が静かに流れていたが、優子には聴き入る余裕がなかった。
呼ばれて、診察室に入り、椅子に座るなり、優子は泣きだした。柚木は驚いた。
「どうされましたか?」
穏やかな柚木の声が有り難かった。優子は子供のように泣き続けた。
「何かあったんですね?」
柚木は優子を思いやり、優しく言った。
優子は黙って頷いた。
「入江さんですか?」
優子はまた頷いた。そして、泣きながら、あった事を洗いざらい話した。
「そうでしたか。それは怖かったですね。……大丈夫だとは思いますが、毎日手紙がきたとか、別れのせりふにしても、脅迫ですから、警察に届けておかれた方がいいです。でも、あまり心配しないように。ストレスが一番いけませんから」
柚木は心底、優子を心配した。守ってやりたいと思った。柚木は、優子に特別な感情を持ち始めていたが、自分では気付いていなかった。
「先生」と、優子は、柚木にすがるような目をして言った。
「何ですか?」と、柚木は優しい目で聞いた。
「私、何もできなくて困ってるんです」
「どんな事ですか?」