【前回記事を読む】息子の就職先を伝えるも、周囲の反応は悪い。外国人技能実習制度のイメージが悪いらしく…「もっとまともな仕事を探してこい。」
1 発端
―外国人技能実習制度―
「あなたの実力なら、英語の先生になるのは難しくないでしょう。今の内定先が気にいらないのなら、そこは断って、来年度に教員採用試験を受けることも、選択肢として考えてもよいかもしれません。あなたはどう思いますか」
「そうですね。考えてみます」吉岡は呟いた。
そのようなことを言われてキャリアセンターを後にした帰り道に、将来の方向性を迷いながら歩道を歩いていた時、向こう側からものすごいスピードで自転車が走ってきた。
あまりにスピードが速かったために、よけきれずにぶつけられた。運転手は若い男であった。男は謝りもせずに、何ごともなかったように走り去っていった。
「なんてひどい奴だ!」
怒りは頂点に達した。
しかし少し時間を経て「あの男はいったいどういう人生を送っているのだろうか」と考え始めた。
きっと周囲のことなど何も考えない奴なのだろう。もしかすると、人生、何も考えない奴の方が幸せに過ごせるのではないかという気がしてきた。
「そうだとすると、人生を真剣に悩んでいる自分は不幸だということになるのか」
確かに今の状況は決して幸福であるとは言えないのではないか。ふとそんなことを考えた。
親にあまりにうるさく言われているので、12月になったというのに、吉岡は就職先を探してキャリアセンターに通っている日々である。
しかし監理団体での仕事については、やってみたいという気持ちも依然として強く持っていた。そしてクリスマスイブの日、この日もキャリアセンターに出かけた。大学の友人といえばゼミのメンバーくらいで数少ない。