4年生たちはもうすでに就職先を決めていて、帰省するやら、サークルのパーティやら彼女との約束があるとか言っていたが、自分には特に予定はなかった。
たまたま大学でばったり出会ったゼミの同期生と、学食でコーラを飲みながら昼食を取った。ささやかなクリスマスイブ・パーティである。
「お前、まだ就職活動やっているのかよ。内定もらったんだろう」
「親がうるさくてね。別の就職先を探せって毎日しつこいんだよ」
「俺は中堅のメーカーから内定をもらったけどね。名前は知られていないけど、ある分野で世界的なシェアを占めているって聞いているよ。有名でないから偏差値の高い大学の連中は行かないらしいけど、俺たちのレベルの学生がそういう企業を支えているんだよ。俺はそれで満足しているよ」
そう言う彼は、どこか誇らし気に見えた。
「それもよかったかもしれないな。今から探してもなかなかそんな会社もないからな」
そんな話をしながら、談笑して過ごした。そして彼も夕方に彼女との約束があると言って去っていった。
「もしかするとキャリアセンターでキャリアコンサルタントが言っていた、自己理解と仕事理解が足りなかったのかもしれないな。このまま就職活動を続けるべきか。それとももうこれ以上大学にはいられないので、卒業して、いっそ来年教員採用試験を受けるべきか」
吉岡の悩みはますます深くなっていった。
大学からの帰り道だった。大学の近くのショッピングモールは華やかな飾りつけで、多くの人々が楽し気に行き交っていた。
彼等を横目で見ながら駅に向かい、電車に乗って自宅の最寄り駅に到着して家路についている途中で偶然、道端にうずくまっている中年の女性を見かけた。彼女は吉岡に向かって「助けて、助けて」とさかんに叫んでいた。
「どうしたのですか」
吉岡は尋ねた。