まえがき
熊本県の中学校臨時講師を経験した時に、ある飲み会の席で、校長が職員たちに「どうして教員になりたいと思ったのかね?」と一人ずつ質問していたことがあった。「昔の学園ドラマに憧れて……」と言う職員もいれば、ずっと考え込む職員もいた。私もどうして教師になりたいのか、また、どうして臨時講師をしているのか、分からなくなってしまうことが時々ある。
でも、このような仕事をしたいという理由が口には出せないにしても、中学時代に担任を始め、先生たちに恵まれたこともあり、子どもたちのために誠意を持って力になりたいという想いがあるに違いない。
ただ、校長が何故こんな質問をしたのか、おおよその見当はつくが、そうやって教師間で語り合うのも良いことであろう。こんな明るい教師たちの世界が多々あるが、学校によっては実に信じられない裏の世界も見てきたので大ショックである。
中学校の前に、高校の非常勤講師と臨時講師(臨採)も経験してきたが、まさか教師の世界にも身分差別があるとは思ってもみなかった。特に非常勤という身分は、あまり教師としては認められない傾向が強い。臨採にしても勤務していく上で、「あの先生は所詮臨採だから……」と馬鹿にしたような目で見られることもよくある。こんな事が果たして許されて良いのだろうか? と、つくづく疑問に思う次第である。
教育委員会や学校は自分たちの都合で、人の事情も顧みず最初は腰を低くして、人員確保の為に何としてでも非常勤や臨採を雇おうとする。しかし、半年や1年経てばそのままポイ捨てするというやり方が、熊本県に限らず非常に多い。
私は生まれも育ちも広島市である。このような教師の裏世界も知らずに、身内の事情で熊本まで出てきて親戚宅に居候となりながら学校の仕事に就いてしまった。
中学生時代に担任を始め、先生方に面倒を見てもらったきっかけもあり、どうしても教師になりたいが為に、自分なりに一所懸命頑張ってきたつもりが、結局無惨に終わってしまい、プライドがガタガタに傷ついてしまった。これは私の努力が足りなかったと認めても良い。
しかし、勤務期間中での差別的扱いは別問題であり、このことに関しては怒りが収まらないのだ。この怒りを主として悔しさ、悲劇、裏切りをまとめて公開することを覚悟の上で決意した。中には信じてもらえない人もいるだろう。だが、事実は事実! 今回教師になりたかったきっかけを含め、学校の裏世界を書いた中で、ほんの少しでも理解して頂ければ幸いである。