第一章 発達障がいに悩む人たち
発達障がいは治るのか
自閉スペクトラム症のほとんどはADHDが併存しています。医師からどちらかの症状を告げられたとしても、症状の重い方を診断しているだけで、どちらもその中にもう片方の症状が隠れていることが多いのです。
カードの表裏の一方であるADHDを改善することで、自閉スペクトラム症の症状も多少緩和することができます。もちろん他の発達障がいでも同様です。
また、発達障がいは遺伝によるものが多いので、お子さんが発達障がいであれば、遺伝的に片方の親御さんがそうである可能性は高いと考えられます。そのような時は、親子一緒に治していくことが可能です。
発達障がいを専門に扱う小児科医は、親子一緒に診ることが望ましいでしょう。中でも、患者さんの父親が自閉スペクトラム症やADHDを抱えていて、母親が悩まされているということが多いようです。
このような場合、父親は、なかなか一緒に外来へは来ません。自分のお子さんを発達障がいと認めず、根性論で治せると勘違いしています。
そして、「なんで病院なんか行く必要があるんだ」と母親を責めてしまう父親もいます。仮に外来へ来たとしても、怒鳴ったり叩いたりしてでもやらせるという根性論の躾が間違いないと医師に言ってほしいために、来ていることが多いのです。
しかし、私はそういう父親に対して毅然(きぜん)とした態度で、「その考えは間違っています」とはっきりと告げます。なぜなら、そのような考えで接することが、お子さんの発達障がいの症状を悪化させる原因になるからです。
「怒鳴ったり叩いたりしても意味がありません。かえってお子さんの自尊心を傷つけてしまってやる気をなくしたり、自分より立場の弱い子を叩くようになったりしますよ」
私がそう強く言ってもまだ半信半疑な方も少なくありません。ましてや自分も発達障がいかもしれないということを理解してもらうには、少し時間が必要となります。