会社につくと、いつもと様子が違った。何やらみんなバタついている。また誤配かなと思っていたが係長が話しかけてきた。

「大ちゃん、川場さんが交通事故で意識不明の重体になったそうだ」

「え……」

大輔は頭が真っ白になった。

詳細を聞くと朝方に、店舗の配送が終わり会社へ向かっている途中、対向車線の小型トラックが突然、こちらの車線にきて正面衝突。しかも高速道路だったため、かなりの速度が出ていた。原因は相手側の居眠り運転だった。

「市内の病院に運ばれたんやけど、かなり危ないらしい……」

とにかく無事を祈るしかなかった……。

そして正午、社員全員が会議室に集められた。センター長が話し始めた。

「既に皆さん知っていると思いますが、今朝ドライバーの川場さんが交通事故に遭いました。……そして先程ご家族から連絡がありました。残念ながら……お亡くなりになられました……」

「……………………………………」

その後誰が何を話していたのか大輔はよく覚えていない。

「まさか、あの時が最後になるなんて……」

大輔は先週、川場さんと駐車場で仕事の話を軽くしたことを思い出していた。あの会話が川場さんとの最後のやり取りになってしまった。

交通事故で死亡するのはよくニュースで見聞きするが、言葉は悪いが他人事だった。だが、今回は同じ職場で、仲よくしてもらっていた人だった。

「人ってこんな簡単に亡くなるんだな……」

 ショックと悲しみで一杯だった。当然その日は満足に仕事ができなかった。

 ――7月中旬――

川場さんの死から数か月が経った。大輔は会社のリフレッシュ休暇で5日間の休みを取得した。大輔の会社はGW、お盆、正月は休みではない。その代わり年に2回、5日間の休暇が与えられる。大輔は、その休みを使って大好きなプロ野球観戦をしていた。

「おっしゃあ、先制や! 今日勝ってカード勝ち越しや!」

大輔が応援している大阪ファインズ、現在激しい優勝争いをしている。この日は最下位チームとの対戦カードで三戦目。この試合を勝てば勝ち越し。優勝争いから脱落しないために落とせない大事なゲームだった。

 

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