三人目の子どもが生まれて、一歳になったばかりの頃でした。

照将さんとは仕事の上での関係で、ほかの議員の方々と同等にできる限りのお世話をしました。それまで全く縁のなかった議員の仕事を知ることにもなりました。

議員を陰で支える仕事でもありました。そして、議員が陰でどんな目で見られているか、どのように言われているのかも知ることになりました。

決して褒められていないのを見たり聞いたりするたびに同情し、少しでも役に立ちたいと日々仕事に務めていました。

親しくなったきっかけは、照将さんが地元の首長選挙に立候補する話が出て、それが何かの事情で立ち消えになった時期に、同期で親しい議員仲間の方々が励ます会を開くということになり、そこに私を含めた何人かを招待してくれたことからでした。

私は、詳しい事情は知りませんでしたが、照将さんがどんな思いでいるのか、気にかかっていました。失意の中にいるのではないかと、雑談に耳を欹(そばだ)てていました。

議員仲間から「残念だったな」と言われた時、硬く横一文字に閉じた口を開き「俺は、議員でやっていく」とただ一言いいました。私は、照将さんの並々ならぬ決意を感じ、「頑張ってもらいたい」と強く願いました。

その場に集まった同僚議員の中には、別の首長選挙にこれから出ようとして抱負を語っている方がいて、照将さんは頷きながら静かに聞いていました。

もうすぐ師走という寒い日の夜でした。初めて会ってから三年ほどの月日が経っていました。

 

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