第一章 トマホーク強奪と裏切り

東京湾岸のあるビルの地下室。無機質な蛍光灯が微かに揺れる薄暗い空間で、八人の男と一人の女が円卓を囲んでいた。机の上には、輸送経路を示す地図、衛星写真、そしてトラックの車列に関する情報が広げられている。

「標的は輸送中のトマホーク巡航ミサイル。タイミングは県道、トンネルの中だ。核弾頭搭載型を一基だけで良い」

リーダーのコードネームは〝カイザー〞。筋肉質な体と冷静な目つきが特徴の40代後半の男だ。地図の一点を指差しながら静かに話し始めた。

「ここが最適なポイントだ。トンネル内はGPSが不安定で、衛星追跡が一時的に途切れる可能性が高い。警護車両は軽装甲車2台、トラックの前後に配置される。予想兵員数は合わせて10〜15名程度。だが、相手は自衛隊の精鋭だ。侮るな!」

「質問は? 疑問は全て払拭してから作戦開始だ。ミスは許されないからな」

「スケジュールは?」と質問したのは、戦術班の責任者である〝グリム〞。髭を短く刈り込んだ中肉中背の男だ。

「トラックは24時30分に米軍基地を出発し、当該トンネルには25時45分に到達する見込みだ」カイザーが応じた。

「作戦の成功率は、完全に準備とタイミングにかかっている。妨害電波を使う時間は正確に5分間、それ以上長引けば追撃部隊が現れる」

メンバーの一人、電子戦の専門家である〝リリー〞が小型の電波妨害装置を机に置いた。

「これが鍵になるわ。この装置はトラックの通信を遮断し、警備車両同士の連携も切る。けど、出力が大きすぎると、我々のドローン操作も影響を受ける。精密な調整が必要よ」

その言葉に、カイザーは一瞬眉を寄せた。「調整が間に合わなければどうなる?」

「ジャマーなしで挑むことになるけど、それは避けるべきね。リスクが跳ね上がる」リリーは即答した。