「経子さんは宇栄原桃加を殺すつもりだ」

海智が言った。

「宇栄原桃加に連絡を!」

金清が慌てて二人の刑事に指示した。

「桃加なら今、蒼と一緒に花火を見に行っているはずです」

「よし、車を出してくれ。君達も一緒に来るんだ」

「ちょっと待って、二人は外出届を出さないと」

一夏が慌てて言うと、

「今それどころじゃない!」

海智と金清が同時に叫んだ。

二人の刑事が乗ってきた警察車両に三人は乗り込み、古浜海岸に向かった。途中何度も桃加と蒼の携帯に電話したが花火の音で聞こえないのか双方とも全く反応がなかった。経子の携帯は電源が切られているようだった。

金清は何か思い詰めたように夜空に打ち上げられる花火をじっと眺めていた。海智と一夏もドンドンという花火の音を聞きながら、ただ押し黙って車に揺られていた。

海岸はかなりの混雑で、三人を探し出すのは至難の業と思われた。

「双亀岬へ行った可能性もある。二手に分かれて捜そう。俺と田中と一夏ちゃんはここで捜索。佐々木と海智君は双亀岬に行ってくれ」

「分かりました」

 二人の刑事は既に引退している金清の指示に素直に従った。海智は佐々木という背の高い方の刑事と車に乗り、双亀岬展望所の駐車場へ向かった。

次回更新は10月29日(水)、18時の予定です。

 

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