「おまえ好みの女だ、恭平。極上だ。襲っちまえ」相手は黙った。呼吸が荒くなっている。

「レイプしろ」

男はベッドを見た。弟は深い眠りについている。あの事件以来、意識は戻らないままだ。

「いいのか?」
「メタメタにしろ。情報はこれからメールで送る」
「了解」

そう言った男の声は興奮で震えていた。男は電話を切った。ケータイを病室のデスクに置いて前かがみの姿勢になる。それからゆっくりと膝の上で両手を組み合わせた。

手で顎を押さえる。むくんだ弟の顔をじっと見つめる。

「工藤。死ぬほど後悔させてやる」

福田は声に出してそう言った。

次回更新は10月23日(木)、21時の予定です。

 

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