【前回の記事を読む】「ダメ。まだダメ! ねえ、ねえってば」――祈るように彼の手を握ったら、彼は握り返してきた。なのに、やがて力が抜けていって…

奇跡の贈り物~次元を超える絆の物語~

クーカにはまだ意識があった。

死に向かうためのエネルギーかもしれないが、熱量を持っている自分にクーカは気づくことができた。

「俺はどうなった? 重さを失ったようなこの妙な軽さは肉体を伴っていないってことだから?」

クーカは色のない煙に包まれていた。

重い鎧を脱いだ後のような痛みも苦しさもない世界があるとしたら、というかクーカは今その中心にいると思った。

「俺、終わってない。死んでないと思うよ」

クーカは覚醒している自分に気づくことができたのだ。

どうすれば今の状態をチッケに伝えられるのかを瞬時に考え行動したいというのに、クーカは動くという感覚を忘れている。確かに心臓は止まり、徐々に肉体の全ての活動が終わろうとしている。

「あと少しで俺の意識も肉体の後を追って消滅するのか?」

クーカはできるだけ冷静でいたかったが、それでも必死になるしかなかった。既にクーカから何かしらのエネルギーが無音のまま噴出していた。

「これは……俺の意識が持っている強いエネルギーがチッケに向けられているのかもしれない!」

こんなことがあるのだろうか、とクーカは半信半疑でこの感覚に静かに身を任せることにした。

クーカは

「そう簡単にチッケのそばを離れるわけにはいかない!」

と思った。

一人ぼっちになってしまうチッケを守り続ける方法を今も見つけようとしているクーカだった。

やっと冷静さを取り戻したクーカは

「この状態は何なのだろう?」

と持ち前の強い探究心に火がついた。