そう言うと、蒼はナースステーションを出て一階へ向かった。四〇一号室のドアが開き、中から泣き腫らした目をして憔悴しきった一夏が出てきた。

「大丈夫か」

彼女はそれには答えず、海智の目の前の椅子に力なく座った。

「どうしてこんなことが二週も続けて起こるの・・・・・・」

「さっき、蒼が警察に連絡するって言ってた」

「また警察? もう、どうしたらいいの・・・・・・」

「さっき言ったとおり、俺も梨杏を見た。蒼には相手にされなかったが、やっぱり裏に何かある。こうなったらもう一度金清さんに相談しようと思う。だから心配しないで」

「ありがとう、海智」

「抗生剤を点滴した後に急変したっていうのは本当かい?」

「ええ、石川は心タンポナーデで入院時から心嚢ドレナージをしていたんだけど、そのせいで細菌性心膜炎を合併して、抗生剤が一週間以上継続されていたの。一日三回で、一時、九時、十七時。今晩の一時の点滴は私がしたの。急変したのはそれがもう殆ど終わる頃だった」

「点滴を開始した一時に嵐士に変わったところはなかった?」

「私が失敗して二回針を刺したから、それには文句を言っていたけど、それ以外は何も」

「そうか・・・・・・」

「ちょっと、霊安室に運ぶの早く手伝ってよ」

四〇一号室から出てきた小林が不機嫌そうに言うと、一夏はすぐに立って部屋へ向かった。

次回更新は10月17日(金)、18時の予定です。

 

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