「あの人信用できるの? いっつもいやらしい冗談ばかり言ってるんだけど」
一夏は怪訝な表情で訊いた。
「元警部補だから信用はできると思う。口は軽いけど悪い人じゃないと思う」
「そう・・・・・・それならいいけど」
彼女は金清を仲間に引き入れたことに幾分不満があるようだ。
「ここで事件を整理してみよう。さっき説明した通り、この四階病棟は階段と二つのエレベーター前に監視カメラがあり、出入りする人間を完全に把握している。非常階段には鍵が掛かっている。つまり、一種の密室になっている。
七月十八日十七時頃、中村大聖が救急病棟から搬送されて四〇三号室に入室。その後数人の医療従事者と患者と患者の家族と思われる人間が病棟に出入りしているが、全員病棟から出て行っているのを確認している。午後九時頃には信永経子も帰宅。その後不審な人物が侵入した形跡はない。
そして翌午前二時頃中村大聖が急変。つまり、奴が急変した時にはこの病棟には君と見野という看護師と入院患者しかいなかったわけだ。ただ、これは非常階段に鍵が掛かっていたという条件が必須だ。非常階段の鍵は君達が保管しているのか?」
一夏はくすくす笑みを溢している。
「何がおかしい」
海智がむっとして言った。
次回更新は10月14日(火)、18時の予定です。
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