約束

息子が生まれ、一樹にとってそれは本当に幸せな日々であり、彼にとって家族がすべてのようだった。

息子が生まれてから旅行が好きになっていった一樹は、毎年のように、ゴールデンウィークや夏など、年に一度は必ず旅行の計画を立ててくれた。

食べることが好きな一樹は、旅館探しはいつも料理を重視し、私は息子がいても好きなタイミングで入れる、客室露天風呂がある旅館がいいという、私の希望も叶えてくれた。

一樹は自分にはお金は使わず、家族や旅行にだけは惜しまずお金を使ってくれていた。

しかし、コロナ禍で今までのような旅行が難しくなり、彼が亡くなった年は「今年の秋冬からはキャンプデビューだ!」と張り切り、キャンプグッズの情報の収集に毎日ニヤニヤしながらスマホを見ていた。

そして、実際に見に行ってみようとアウトドアのお店に行き、気に入ったものが多かったこともあり、調理系以外のものは、ほぼその日に買い揃えた。

調理系などはどんな物を揃えようかと、その後もとても楽しそうに調べていた。

そして息子が寝た後は「焚き火に当たりながら、星空を見ながら2人でお酒を飲もうね」という会話があった。

次回更新は10月6日(月)、20時の予定です。

 

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