言葉で表現するのは難しいのだが、頭がおかしくなってゆくような感覚と同時に心拍数が急激に上昇していくのが分かった。変な汗が滲み始め、まさに死さえも感じさせる謎のパニック状態に陥った。
雑誌などに気持ちを集中させようと試みたがまったく効果はなかった。これは異常事態だと冷静に判断はしたものの、自力でそのパニック状態を落ち着かせることができずものすごく焦り、焦れば焦るほどパニックが悪化していった。
精神科入院で見聞きしていたことを思い出し〈これがパニック障害というものなのか?〉と思いながらも、美容師さんに助けを求めることも躊躇してしまい、とにかく一秒でも早く美容院を出たい。死ぬ気で乗り切るしかないと地獄の時間を味わった。
終わるまで耐えようと必死だった。
その後のシャンプーの際、目元をタオルで覆われた瞬間、状況は更に悪化しまさに地獄だった。
そして美容院を出た瞬間から、嘘のようにパニックのような症状は消えた。
パニック発作だと過呼吸が代表的なのだろうが、明らかに症状が違った。
過呼吸の対処法は知っていたので、可能な範囲でそのとき試みたが治まる気配はなく、パニック障害といっても、人それぞれ症状は異なるのだと知った。
そして問題は、これから先、この症状が出ないようにするにはどうしたらよいのか、ということだった。
あんな異常な、生きた心地もしない死にそうな感覚をもう二度と味わいたくなかった。
次回更新は10月5日(日)、20時の予定です。
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