こんな怒っている丈哉さん、初めて見た。でも嬉しい。ありがとう。歩いている社員がびっくりしている。通る社員があいさつしているが、見ていない。

車に乗って「丈哉さん、私はここでおります。自分で帰ります」

「ダメだ。僕と会社まで行くんだ」

「ええー、どうして、お仕事の邪魔になるでしょう」

「いいや、居ると仕事がはかどる」

「はいぃぃ!?」

「どこに行くか分からないから、僕と一緒にいるんだ」

「大丈夫です。家に帰るから」

「ダメだ。今日は早く帰るから、待っていて」

「どうして?」

「今日は、仕事はお休みだ。書類に目を通すだけだ。待っていなさい」

「……はい」

会社に着いて、社内を歩くとき、手をつないでいる。振り払おうとするが強く握っている。

「丈哉さん、手を放してください」

「ダメだ」

「皆さんが、見ています」

高木秘書が、笑っている。

「いいじゃないか。妻だから」

笑って社員に挨拶している。

「専務、自慢の奥様ですか?」

笑って、

「そうだよ」

「ラブラブですね」

「分かるかい。アハハハハ」とエレベーターに乗った。

八階、専務室。広い! 

「香子、そこに座っていてね」

「はい」

そしたら、電話は鳴るわ、印鑑を貰う方たちが、次から次へと来るわ。丈哉さんはそれらにてきぱき対応。凄い。