大学に通えない以上、保育士の夢はいっきに遠のき、私は抜け殻のようになってしまった。

通える自信をなくした今、留年するのか休学するのか退学するのか。

もちろん結論によっては加算される学費のこともだけれど、何より予備校まで通わせてもらい、自ら行きたいと言った大学に行けなくなったという事実を、私は一体父にどのように説明したらいいのか。

―そして私は、大学に退学届を提出した。

今回の退学は、高校生の時とは違う。

退学する以上、小学生、中学生の頃のように、理由を曖昧で終わらせるには無理がある。もうごまかせないところまできたのか。

10年もの間隠し続けてきた、りょうくんとのあの日の出来事をついに両親に話さなければいけない日がきたのだと悟った。

そして、私が大学のことやりょうくんとの件も含め、こうなってしまった旨を冷静に両親に話せるのか心配していたのもあり、一樹も同席し、両親と喫茶店で待ち合わせ、すべてを話した。

隣に一樹がいてくれたから、私は冷静にあの日の出来事も話すことができた。

大学を退学することは、責めたり怒ることもなくあっさり納得してくれたが、りょうくんとの出来事に関しては、私が想像していた反応とは違いすぎた。

母は最初から最後まで特に何も言わず、父は首を傾げていた。

父と話し、雰囲気や父の表情や言い方から察するに「それは性被害といえるのだろうか?」と、父は明らかに頭を悩ませているようにしか見えなかった。

次回更新は9月28日(日)、20時の予定です。

 

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