精神科看護師としてスタートした頃
私は、看護学校を卒業して、すぐに精神科病棟へ勤務し、意欲に満ちていました。言語や知能などの様々な障害を持った方が、いらっしゃいました。失礼な言い方かもしれませんが、子供のように可愛かったことを覚えています。
私が受け持った患者さんの中でも、印象に残っている患者さんは、45歳で、重度の躁うつ病を患っておられました。2か月程、ベッドから起き上がれず、食事も介助でした。担当ドクターから私は、いつも「何とかしてくれない?」と、執拗に迫られていました。そんなある日、我慢できず、診察介助の時、ドクターに「薬が多すぎるのではないですか?」と抗議しました。
ドクターは、ひどく怒っていたようですが、減薬して頂けました。その後、私は毎日、床上の患者さんのところに顔をだし、「体調はどうですか?」と声掛けしていました。以前は、死んだようだった風貌に、生気を取り戻されているように感じました。しだいに患者さんは、自ら着替えが出来るようになり、そして歩いて自動販売機に行けるようになられました。患者さんの状態を見ながら、1日2時間の院内木工作業を勧めてみましたところ、喜んで行かれる姿を見て、私は大変嬉しく思いました。
その後、月日と共に回復され、退院し授産施設で働かれることになりました。それ以降、再入院されることもなく、毎月一回、手紙が届いていました。「自分で稼いで、タバコが買えるようになりました……元気です……」など書かれていました。本当に、あの時、勇気を出して、患者さんのために良いと思ったことは信念を持って、ドクターに告げて良かったと思いました。